3Dプリンタの開発・最新動向と応用事例
= 刊行にあたって =

 製品を設計するデザイナーがアイデアを形にしようとする場合に、従来は自分で粘土や木材、発泡スチロールなどを使っていたが形がイメージに近いものにとどまっていた。形についてはCAD設計ツールが普及し始めるとディスプレイの中ではアイデアを完全に形にすることはできたが、実物サンプルを得ようとすると時間のかかる旋盤やフライス盤を使った作製プロセスが必要であった。ここに3Dプリンタが登場し3次元データから実物サンプルをダイレクトに作製することが可能となった。デザイナーは自分で手作りするものよりも遥かに製品イメージに近い実物サンプルを素早く入手可能となり、試作領域ではそのメリットが広く認知され多くの業種の企業に普及してきている。一つの原理で3Dプリンタが発明されると、用途の拡大とともに様々な使い方に適合した。

 (中略)

 製品への使用が様々なメリットを生み出し、サステナブルな循環システムの実現や、個人の仕様に完全に合わせたパーソナライズ、必要なところ必要な時に製品が出来る物流と在庫の無駄がない仕組みの実現など製造領域で活用されると大きなインパクトを出せることが理解され始め、試作用途の段階から製造用途への格上げの努力が現在行われている状況である。後の章で述べるように既にいくつかの産業では活用に向けたブレイクスルーがなされており、今後50年社会変革を支え人々の生活の質を向上させてゆく重要技術として進化し続けていくと予想される。

(「1-1 3Dプリンタ技術の変遷」より一部抜粋)
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