次世代店舗 第4号 〜The Future of Store Innovation and Revolution〜
『次世代店舗』第4号に寄せて

令和2年は新時代幕開けに相応しい東京オリンピックが待たれる春となり、街中が華やいでいました。観光立国を目指して外国人旅行客が新年からあふれるほどに訪れていましたが、節分を前に急激に黒い雲が覆うようになったのでした。新型コロナ感染症が世界中に広まり、日本でも各地で緊急事態宣言が発令されて、今なお社会活動が停止しているのです。

今号では平成時代から小売業を振り返り、公益財団法人流通経済研究所 鈴木 雄高様に基調論考をいただき、新時代への提言を行っております。
流通小売業態の分析から始まり、ユニークな取組を行う流通業からこれからの商業のあり方、顧客との向き合い方への深い思慮に基づく提言をいただきました。後半での鈴木氏のコロナ禍ご経験に基づく地域社会とのつながりのお手本をご説明いただけたのは、時期にあった幸運でもあります。
連載の課題整理では、最先端のコンビニエンスストアの現況と未来図について、経産省がフランチャイザー、チャイジー双方の意識調査と協議を通じてまとめた「コンビニのあり方」報告を取り上げ、最新技術と店舗経営の重要問題を整理しました。鈴木氏の論調にも賛同し、<店舗はメディアである>という概念に触れています。

しかしながら、消費市場や社会全体の低迷感は、小売流通業の未来も曇らせてしまっています。このままでは戦後最悪の不況が生じないとも限らない景気環境です。回復までの道のりは、到底予測できないほどの落ち込みをもたらしています。

家庭内自粛を求められた国民は、児童生徒の学ぶ権利も生活習慣も一変しており、今まで通りの日常生活への回帰は望めない状況にあります。政府、専門会議からの提言でも「新しい生活様式」という感染症予防的日常社会を求められており、店舗での接遇やお客様との交流、コミュニケーション自体がどのように変化するかも模索しなくてはなりません。幸いにも流通小売業では食品を中心に、日用品の販売量は拡大しており、この機会に登場した社会インフラとしての産業や行政サービスなどが、エッセンシャルワーカーとして小売流通業が脚光を浴びたのは嬉しい評価であります。

店舗運営に当たっては感染リスクを避けながら、ある意味では命を掛けた営業活動がどれほど国民生活に貢献しているかを、医療関係者などと並列して謝意を受けていることが、職業への誇りと尊厳につながっていると改めて思えました。

新感染症の脅威は長期間継続するとの情報もあり、まさに社会の風景が変わる時代となっています。長年続いた事業の終焉、再編、大いなる転換、業界の喪失も覚悟しなくてはならない時期であるかもしれません。

本誌が読者の構想に僅かな光明であることを願い、開けない夜のないことを共に信じたいと思います。

『次世代店舗』編集長 花房 陵
2020年6月
※ 2020年6月現在。変更の可能性があります
次世代店舗 第4号 
〜The Future of Store Innovation and Revolution〜
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