ある生き物を包みこんでいる媒体が、その生き物の生きる仕組みに影響を与える、というのは生物学者にとっては当たり前のことである。生物の基本的な属性の多く(大きさや形、どう動き繁殖するか、どうやって餌をとるか、感覚器の性能と仕組みなど)が、その動植物の生きるのが水中か空気中かによって異なることは、誰でも良く知っている。サカナ、エビ、クジラ、コンブなどは海の生き物で、陸棲(空気中)の生き物のどれかと間違える人などいる筈がない。同様に、セコイア、ハチドリ、キリン、トンボなどは陸棲だと簡単に判る。しかし生物学者の多くは、陸棲生物と水棲生物の間で生きる仕組みが枝分かれしていることを、(空気と水という)媒体の物理で上手く説明することが出来ない。そこに本書の目的がある。
 
 
 
生物学のための水と空気の物理 Copyright (C) 2016 NTS Inc. All right reserved.