微生物、動物/植物細胞を培養するバイオリアクター:設計とスケールアップの基礎
 〜実習用ExcelテンプレートCD-ROM付〜
= 刊行にあたって =
 バイオリアクターは伝統ある発酵(バイオ)産業の心臓部である。しかし、産業界には「職人芸」、「秘伝」と神秘的な雰囲気の他に秘密主義もありバイオリアクターについての情報は非常に限定されている。先人の知識の蓄積である経験は大事であるが、その経験をただ伝えるのではなく、その根拠を解析し定量化することによりさらなる展開が可能となる。

 情報がほとんど得られない他社のことは置いておいて、自社あるいは自分の部署ではバイオプロセスの諸現象を解析し定量化した情報を共有しておく必要がある。AIによるベテランの知識・経験の形式知化(文章・計算式・図表などで説明できるようにすること)が進んでいる。バイオリアクターの設計・スケールアップについてはサイエンスだけではなくエンジニアリングのセンスも必要である。

 微生物や動植物細胞などの生物細胞の培養は液体培養と固体培養に大別されるが、本書では主に液体培養について解説する。

 第1章では、バイオプロセスにおけるバイオリアクターの概要について解説した。第2章では、バイオリアクターの設計の基礎となる生物反応速度論について解説した。第3章では、バイオリアクター操作法について解説した。バイオプロセスで広く使われている流加培養操作と灌流培養操作について例題を含めて解説した。第4章では、バイオリアクターの設計計算法について代表的なバイオリアクターである撹拌槽および気泡塔の設計計算に使う相関式を含めて解説した。実際の設計計算について例題を使って具体的に解説した。第5章では、撹拌槽および気泡塔バイオリアクターのスケールアップの手法と実際のスケールアップ計算について解説した。第6章では、代表的なバイオリアクターの操作と設計およびスケールアップにおけるトラブルについて解説した。特に非ニュートン特性および泡沫層の形成について解説した。第7章では、今後のバイオリアクターの展開について解説した。付録では、Excelを使った問題を解く際に使用するExcelの便利なツールであるゴールシークとソルバーの使い方について簡単な例題を使って解説した。

 Excelによる設計・スケールアップ計算の例題を付けて分かり易く解説したので、添付してあるCD-ROMに収められているExcelテンプレートファイルを使い実習することにより理解を深めて頂きたい。テンプレートには実習シートの他に解答シートが付いているので、それを参照にしながら実習し本書の内容を具体的に理解できるようになっている。テンプレートは是非実務にも使って頂きたい。

 本書の出版にあたり大変お世話になりました初田竜也氏と佐藤舜華氏に心から感謝申し上げます。
川瀬 義矩
 
微生物、動物/植物細胞を培養するバイオリアクター:
設計とスケールアップの基礎 
〜実習用ExcelテンプレートCD-ROM付〜
Copyright (C) 2023 NTS Inc. All right reserved.