培養細胞が拓く創薬の今 冊子+CDセット 〜研究、規制、自動化、そして教育へ〜
= 刊行にあたって =
 近年のバイオテクノロジー分野における進展は目覚ましく、創薬研究においても、従来の動物実験に代わる、より効率的で精度の高い手法として、培養細胞を用いた研究が注目されています。

 2018年5月に出版された『創薬のための細胞利用技術の最新動向と市場』は、多くの研究者の皆様に最新の情報をお届けすることができ、大変好評をいただきました。それから6年、細胞培養技術とその周辺技術はさらに飛躍的な発展を遂げ、創薬研究の現場は新たな局面を迎えています。

 本書では、培養細胞を用いた創薬研究の最前線を、以下のテーマに焦点を当てました。

ヒト組織を模倣するMPS/オルガノイド研究の進展:

 体性幹細胞、多能性幹細胞を用いたオルガノイドを含むMPSの進歩は、腸管、肝臓、脳、眼球、肺、腎臓といった様々な生体組織をin vitroで再現することを可能にしました。創薬研究における、よりヒトに近い環境での評価を可能にする技術として、その将来性は計り知れません。

細胞間のメッセンジャー、エクソソーム研究の進化:

 細胞間コミュニケーションの重要な役割を担うエクソソームは、創薬における新たなターゲットとして、また、ドラッグデリバリーシステムへの応用も期待されています。本書では、エクソソームの多様性、不均一性、そして治療への応用における課題と展望について解説します。

個別化医療を推進するiPS細胞技術:

 ヒトiPS細胞から誘導された神経細胞は、創薬スクリーニングや非臨床試験に新たな道を切り拓きました。さらに、疾患特異的iPS細胞を用いることで、患者一人ひとりの病態に合わせた創薬、個別化医療の実現に向けた研究が進んでいます。

創薬研究の効率化を実現する自動化技術:

 細胞培養工程の自動化は、創薬研究の効率化、標準化、そしてコスト削減に大きく貢献します。本書では、最新の自動化技術の動向と、今後の創薬研究における役割について考察します。

次世代を担う人材育成の重要性:

 これらの技術革新を支え、さらに発展させていくためには、高度な知識と技術を持った人材の育成が不可欠です。本書では、細胞培養技術、GMP教育の現状と課題、そして産学官連携による取り組みについて解説するとともに、VRやシミュレーションゲームといったデジタル技術を活用した教育の可能性についても言及します。

 本書が、培養細胞を用いた創薬研究に携わるすべての研究者、そしてこの分野に興味を持つ学生の皆様にとって、最新の知見を得るとともに、今後の研究開発、そして人材育成の指針となることを切に願っております。

(株)セルミミック 代表取締役
古江 美保
 
培養細胞が拓く創薬の今 冊子+CDセット 
〜研究、規制、自動化、そして教育へ〜
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