発刊に当たって

近年における電子機器の進歩は目覚しいものがあり、社会を一変させてきている。特に、携帯電話やノートPC、ビデオカメラ、デジタルカメラなど、最近の電子機器は軽・薄・短小化が進み、手軽に持ち運べるようになったことから、日常生活の中でどこでも抵抗無く使用できるようになった。現在では、ITとこうした電子機器の利用により、いつでも、どこででも手軽に情報を交換できるようになった。
これらの電子機器が実用化できるようになったのは、使用される全ての構成部品・材料の技術進歩と、それらの品質・信頼性が格段に向上したからに他ならない。例えば、携帯電話を分解してみると、こうした最新のデバイスや実装技術が凝縮されていることを実感できる。
 電子機器を製品化するためには、開発、回路設計、構造設計、信頼性・安全性設計、生産技術、品質保証技術等、多くの専門技術者の共同作業となる。これらの技術者にとって共通的に必要なものは、使用される電子部品・デバイスとその実装技術に関する知識であるが、技術の進歩と新製品化のスピードが速く個々の製品についてまで理解するにはかなりの努力を必要とした。LSI、SMT、ソルダリングなど個々の技術についてはそれぞれ専門書や論文として入手できるが、多岐にわたる部品・材料とその実装技術が纏められたものは見当たらない。
 一方で、たった1個の電子部品でも、使い方や実装方法を誤ると短時間で性能劣化や場合によっては発煙・発火の原因になり、製品の全面回収といった深刻な事態に追い込まれることになってしまう。
 かねてから、電子技術に携わる各方面の技術者の方々が、多岐に亘る最新部品・材料とその実装技術を総合的に理解でき、信頼性の高い製品の実現に役立つような書籍の必要性を感じていた。
 幸い、電子部品、デバイス及び電子機器の開発・生産・品質管理、信頼性等に携わっている第一線の技術者の方々から協力を戴くことができ、本書を纏めることができた。
 本書では、可能な限り最新の電子部品、半導体デバイスとその実装技術について取上げ、その特徴、性能、信頼性、使用上の注意点など、実務に活用し易いような内容で構成した。なお、汎用LSIについては、既に多くの専門書が発行されており、多品種にわたるので、本書からは除いた。本書のなかでは取上げられなかった部品は数多くあるが、少なくとも主要部品についてはほぼ網羅できたのではないかと思っている。
 本書が、電子技術にたずさわる多くの技術者の方々にとって座右の書として活用され、技術の発展と品質・信頼性向上に役立つことを願っている。

 最後に、本企画を提案され、本書の出版に多大の心血を注ぎ、若干の発行の遅れをいとわず忍耐強く内容の充実に努力されたR&Dプランニング社の山本正和社長ならびに多方面に亘る原稿の収集と煩雑な編集業務を根気強く成し遂げてくださった深沢志津子氏に対し、敬意と感謝の言葉を捧げたい。
共同編集者  井原 惇行
益田 昭彦
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