環境発電ハンドブック 第2版 〜機能性材料・デバイス・標準化:IoT時代で加速する社会実装〜
発刊にあたって

 旧版「環境発電ハンドブック」は,環境の中に薄く広く存在するエネルギーから電力を取り出し発電する“環境発電(エネルギーハーベスティング)”を概観し,原理,材料,応用技術をとりまとめたものとして2012年に発刊致しました。それから早いもので9年が経ち,IoTに注目が集まるに従って,環境発電は専門家以外の多くの方々にも知られる技術となりました。

 この間,環境発電に関わる研究者・技術者も大幅に増え,アカデミア,産業界の双方で様々な検討が行われ,新しい機能性材料,高出力の発電デバイス,周辺回路の開発が精力的に進められてきました。一方で,プロトタイプとして良好な性能を持つにもかかわらず残念ながら商業的には成功できなかった発電デバイスの例も多く,社会実装を進めていくためには,引き続き関連の方々の努力が必要と考えられます。本書は,環境発電の最新の情報を提供することによって環境発電デバイス・システムの実用化を促進するため,旧版の内容を大幅に刷新して構成しました。

 本書では,第1編の総論で環境発電の意義を述べ,第2編ではその基礎である,振動発電,熱電発電,光発電の原理,そして無線電力伝送の原理を解説しました。また,環境発電では材料技術がとくに重要であり,これが我が国の強みであることから,第3編では環境発電のための材料技術の項目のさらなる充実をはかりました。さらに,第4編では応用,実例を取り上げ,第5編では市場動向と展望・標準化について解説しました。最新の応用技術から市場動向まで,最先端の情報を数多く盛り込むことができるように,第一線の研究者・技術者の方々に執筆をお願いしました。特に第3編,第4編は大幅に項目を入れ替えており,旧版よりもページ数も増えて,充実した内容にとりまとめることができたと自負しております。

 本書は,環境発電に携わる研究者,技術者はもとより,これからこの分野への取り組みを検討されている技術者の方々,さらには,高付加価値の次世代エネルギーに関心のある全ての方々のお役に立てることを願っております。

 最後に,本ハンドブックの出版にあたり,お忙しいなか原稿を執筆くださった多数の著者の方々に深く御礼申し上げます。また,本書の出版に多大な労をとってくださった(株)エヌ・ティー・エスの吉田隆代表取締役社長に感謝致します。

  「環境発電ハンドブック 第2版」
         監修 鈴木 雄二
東京大学 大学院工学系研究科 教授
環境発電ハンドブック 第2版 
〜機能性材料・デバイス・標準化:IoT時代で加速する社会実装〜
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