リチウムイオン電池の拡大、材料とプロセスの変遷 2023
== 趣旨 ==


 本書は2022年を起点とした、主にBEV用のリチウムイオン電池の生産拡大を、電池材料とプロセスの変化から見た内容である。グローバルな生産拡大に関しては、前著「x/zEV用電池の拡大(目標、現状とグローバルな態勢)」において取り上げた。

 上記に関する調査や整理の過程で、特に気が付いた事は、1.主役である正極材の棲み分けが変わって来た、2.負極材もリチウムメタルやシリコン系、あるいはチタン系(LTO、NTO)など、汎用材では不可能な、新たな特性、比容量や比出力を求めて拡大している、3.電解液やセパレーターなど、一見して変化は見られないが、BEVに特化した進化が含まれている。

 更にはサプライ・チェーンの制約から、バインダーはPVDF/NMP溶剤から水系ラテックスへ移行し、同時に乾式プロセスによる、合理化された電極板製造への模索が始まった。これらはリチウムイオン電池30数年の歴史の中で、懸案であった事項が、電解液系から固体電解質系へのパラダイム・シフトと相まった流れである。

 全固体セルへの流れの一部は、電解質の交代と同時に、セルの構造を単極子から双極子(バイポーラー)へと発展させている。双極子はニッケル水素や鉛蓄電池では、むしろ古典的な技術である。新たなリチウムイオンでの、固体双極子セルは、新たな可能性を秘めていると言えよう。

 本書で以上の内容を取り上げたが、最先端の内容だけに、技術情報の開示や、特許情報も極めて少ない。現時点で敢えて本のテーマとした、内容の不備はご了解の上で見て頂きたい。

  
 (菅原秀一)
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