出版にあたって

 自然界の原子,分子,イオンが織りなす広大な物質群,そしてそれらより構成される物質世界や生命世界を原子・分子・分子集合体レベル,あるいはそのシステムとして精緻に探索,理解するとき,「分析法」は基盤技術として常に不可欠のものです。現代の分析法は非常な速度で発展しており,新しい原理に基づく分析法の創案をはじめ,その扱う被分析対象の多様性から,分析の感度,精度,確度などについてたゆまぬ進歩が続いています。
 本書「先端の分析法 −理工学からナノ・バイオまで−」は1997年にエヌ・ティー・エスから刊行された「最新の分離・精製・検出法 −原理から応用まで−」を全面改訂したものです。理・工・医薬学・環境分野の分析法の基礎と応用はもとより,ナノテクノロジー,バイオテクノロジーにおける分析の内容もカバーした最新の体系的分析法の書といたしました。
 本書の原理編では,分離精製法,物理的検出法,化学・生物的分析法,複合分析法について,先端の分析法の理論,手法,測定例を記載しました。例えば,レーザー分光,顕微ナノ分光,1分子検出,タンパク質の質量分析,二次元分離法,高速DNAシークエンサー,ハイスループット分析,マイクロチップを用いる分析などが含まれます。また応用編では,鉄鋼および非鉄鋼材料,セラミックス,有機高分子,半導体プロセス,医薬品,食品,香粧品,農薬,生体成分,生体トモグラフィー,環境,分析のバリデーションなど,現代における応用分析のルーチンおよび新規手法を解説し,共に最先端(cutting edge)の分析法が欠けることのないようにいたしました。本書が,現時点での分析法の進歩と,基礎および応用の両面を総覧した最重要知識の供給源となることを期待いたします。
 最後に,ご多用中にもかかわらずご執筆をいただいた多くの各分野の第一線の研究者,技術者の方々に心より感謝の意を表します。
2004年 11月
監修者
梅澤 喜夫
澤田 嗣郎
寺部  茂
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