序文

 地球環境保全の動きのなか、昨今では様々な分野で環境配慮型製品が市場投入されています。電線分野でも、官庁及び民間各社のグリーン調達に呼応して、環境配慮型電線であるエコ電線・ケーブルが開発され、普及が図られております。エコ電線は登場しておよそ5年を経過しておりますが、徐々にユーザー認知度はり高まっており、品種によっては20%近くが塩化ビニル電線からエコ電線に置き換わりつつある状況です。しかしながら電線の世界では、エコ電線は歴史の浅い製品であるだけに、まだ技術的に進歩改良の余地があるということも事実であり、材料物性、押出加工性及び信頼性の向上などを目指して電線メーカー、材料メーカーの方々は日々ご苦労されていると思います。
 第55回JECTECセミナー「エコ材料の最先端」では、このエコ材料開発の最前線でご活躍されている方々にお願いして、ご苦労の成果をご紹介いただくとともに、エコ技術はどこまで進歩したのかその一端をお話頂きました。
 エコ電線の差別化要素は被覆材料技術、すなわちノンハロゲン難燃技術でありますが、この技術は電線メーカーあるいは電線材料メーカーにとって30年近い実績がある技術であり、技術的に全く新しいものではありません。それにもかかわらず、エコ電線技術に不断の進歩が要求されるのはエコ電線という製品の、そもそもの成り立ちから来ているのではないかと思います。  これまでの電線というのはより多くの電力、情報をよりコンパクトな設備で伝えるというコンセプトで、機能性と経済性を追求して開発されてきたわけです。一方、エコ電線は、電線本来の機能ではない“地球環境にやさしい”ということを商品の基本的な開発コンセプトにしています。この基本コンセプトである“環境にやさしい”ということの意味は、国あるいは地方によって異なることはいうまでもありませんが、業種あるいはメーカーによって異なることもありえるでしょうし、さらに時間経過に沿っても変化してゆきます。ここに従来とは異なるエコ電線の難しさがあるのではないかと思います。
 エコ電線が、常に“環境にやさしい電線”であり続けるためには、環境規制、消費者の指向など社会全体の動向をよくウオッチして、要求される最高レベルの製品を作っていく必要があります。したがって、情報を迅速に入手し、対応してゆくことが必要不可欠であって、そのための情報サービスがエコ電線のキーポイントの一つと思っております。
 こういった観点から、JECTECでは、エコに関する情報サービスを重点事業のひとつとして積極的に取り組んでおります。2003年にエコに関する調査研究会を立ち上げて、2004年4月からは第2次調査研究会として調査活動を続けており、調査研究会とセミナーを組み合わせて有効な情報発信を図っていきます。
 また、当センターではエコに関してハード面での調査研究にも取り組んでいます。エコ材料は、電線押出時のダイスかすが多いという声があることから、ダイスかすの低減方法について、2003年度からマルチクライアント形式で調査研究を開始しています。さらに、使用済みエコ電線の分別リサイクルを行う際に、エコ材料は塩ビに比重が近いため分別しにくいという問題が指摘されておりますので、高精度分別技術についても今後検討を行なっていきたいと考えています。
 これらの活動を通じて、エコ電線の普及促進にお役に立てればと考えておりますので、今後とも、JECTECの活動に対して、よろしくご支援のほど御願い申し上げます。
社団法人電線総合技術センター センター長 会田二三夫
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