【発刊にあたって】

 プラスチックの35%以上がフィルム用途として使用され、フィルムの材料、成形技術、二次加工技術が非常に重要な位置づけにある。

近年、フィルム技術の集大成というべき液晶の薄型高精細なTVが各家庭に普及してきた。しかし、液晶TVの生産は韓国のSamsungやLG、中国の多くの企業がこの分野に参入してきたため、コスト競争が激化し、TVの生産現場は日本から海外にシフトしている。液晶に使われるフィルムの枚数の削減と製造コストの削減が要求され、部材の統合化、低コスト材へのシフト、光学設計による機能の統合化、プロセスの低コスト化が進んでいる。そういった状況で、差別化した製品を製造するには、高度な技術の総合力、つまり設計技術、基盤技術、素材の合成技術、超精密加工技術と成形・設計CAE技術を磨き上げていく必要がある。

 素材、複合化技術、精密加工技術、微細転写技術や二次加工技術が確立されて初めて我々が良く見る製品に仕上げられているが、これらの技術はもともと日本が得意とする技術であり、技術立国として日本が生き残るには今後もリードしていく必要がある。

 高度な製品を生み出すために部材の製造技術が必須であるが、その加工現場はまだまだ泥臭い経験に頼った世界が多いが、高分子加工の考え方の基本をしっかり把握しておけば、材料の性質、物性の発現やいろいろな不良現象の理解と対策、そして高分子材料の特性に合った加工条件を見出し、優れた品質を有する製品を生み出すことができる。そういった意味で、この分野のレオロジーの基礎知識、成形加工、高次構造、物性を結びつける理論的な理解が必要である。

 そこで、本書はフィルム成形の成形技術を中心に、この分野を専門にしている方々にフィルムの基礎技術を修得できるように、押出機、ダイ、Tダイキャスト法、インフレーション法、二軸延伸法であるテンター法およびチューブラー法、さらに二次加工、添加剤や物性を考える上で重要な高次構造の解析に関する内容について、各部門の一線で活躍されている方々に執筆をお願いした。フィルム成形の基本的な考え方と実際の製品を製造するための成形技術・材料の両方を理解することにより、さらに興味と理解が深まると思っているので、これらの観点から本書を活用してもらえたら、幸いである。

(”はじめに”より抜粋  監修 KT Pokymer 代表 金井俊孝)
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