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PETボトルの最新リサイクル技術動向 冊子+CDセット 〜マテリアル・ケミカル・バイオ〜 |
= はじめに =
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ミネラルウォーター等が入ったPETボトルは,我々が日常生活で使用するもっとも身近なプラスチック製品の一つであり,世界では毎年数千億本もの製品が製造され,そして廃棄されている。また海洋漂流プラスチックゴミの中で,PETボトルは常に上位10位以内に入っており,廃プラスチック問題のシンボルの一つとなっている。
1970年代に米国で実用化されたPETボトルは,軽く丈夫で安価であるため世界中に急速に普及し,日本でも数年後には使用されるようになった。PETボトルのリサイクルは,容器包装リサイクル法が完全施行される前の1993年から開始され,2022年のリサイクル率は約87%とドイツ等の環境先進諸国とほぼ同じ値に達している。日本でPETボトルのリサイクル率が高いのは偶然ではなく,導入当初から競合関係にあるガラスビンとの比較を意識したためである。当時,一升ビンやビールビンなど繰り返し使えるガラスビンが多く使用されていたため,PETボトルは当初1L以上の大型ボトルだけに使用が限定されていた。しかし軽量で壊れ難いために要望が大きく,500mlの小型ボトルの解禁と共にリサイクルの取り組みが始まった。関連業界では環境負荷を低減するために自主ガイドラインを作成し,飲料ボトルの材料を透明PETに限定し,軽量化を促進する等の努力を積み重ねた。その結果,日本で回収される使用済みPETボトルは,ポストコンシュマーの廃プラスチックとしては例外的に高品質で高純度であり,これらが高いリサイクル率を実現させる要因となっている。またマテリアルリサイクルやケミカルリサイクルを世界に先駆けて実用化した実績は,研究開発のレベルの高さだけでなく,環境に対する経営者の優れた判断に帰するもと高く評価すべきである。
廃プラスチックの循環利用を考えた場合,単に排出された廃プラスチックを再利用する技術を開発する,いわゆるend of pipe型の対応では不十分である。製造から販売・回収そしてリサイクルを含むライフサイクル全体を通して環境負荷を低減させることが重要であり,PETボトルはその成功例の一つと言える。
一方,日本では未回収のPETボトルは今でも5%以上あり,これは約10億本に相当し,これらの一部が不法投棄され最終的に海洋プラスチックごみの原因となっている。またPETボトルの販売量が増加したため,軽量化を進めても全体の温室効果ガスの排出量は減ってはいない。今後,技術および社会システムにおける更なる努力が期待されている。
本著は,現在,日本でPETボトルのリサイクルに関連している企業,大学,研究機関の第一線でご活躍されている方々に執筆をお願いした。今後の廃プラスチックや資源循環の発展に貢献できれば幸いである。
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加茂 徹(早稲田大学) |
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