はじめに

 日本政府は,2015年の5月にロボットによる生産と生活の革新をもたらすロボット革命を宣言した。2020年までの今後の5年間について,政府や民間投資の拡大を図り,1,000億円規模のロボットプロジェクトの推進をめざすこととなっている。

 生産と生活の革新は,ロボットと人とが協調するワークスタイル,ライフスタイルをもたらす。これは,ロボットと共に働く工場や,自動運転自動車,宅配にドローンが利用される状況を想像すれば,現実感をもって認識される。

 ロボット革命宣言を契機として,ロボットが再度注目されるようになり,現在の日本では,一種のロボットブームといえるような様相を呈している。単なるブームに終わらせたくない。

 この機会を捉え,本『人と協働するロボット革命最前線』と題する書籍では,生産と生活に分けてロボット革命の概要を説明し,生産,生活,災害対応にまたがる分野について,最新の情報を整理して示す。具体的には,次のように構成されている。まず,序論「ロボットイノベーションで未来を切り拓く」では,政府のロボット革命に関する動きを概観し,追及されている生産と生活の革新に関して,あるべき姿と,解決が必要な課題とその展望をする。ロボット革命を実現するためには,革新的なロボットが不可欠である。そこで第1編「基盤技術〜センシング,アクチュエータ,AIなどの最新動向〜」では,ロボット革命に不可欠な基盤技術について概説する。ロボット革命を現実のものとするアプローチの1つに,第1編で示したような革新的なロボットを実現を追及するアプローチがあるが,それとともに,ロボットによって実現された機能や作業,動作などが,生産や生活のやりかたを革新するプロセスイノベーションを追及するアプローチも存在する。第2編「新しいロボットによるプロセスイノベーション〜ロボット概要とその用途〜」では,さまざまな分野にわたる作業について,どのようなロボット化が実現されているのかを紹介することで,ロボットによるプロセスイノベーションの一端を把握してもらい,この方向からロボット革命を考える材料を提供している。第3編「ロボットデザインと利用者心理」や第4編「リスクと安全対策」は,ロボット革命を実現する革新的ロボットやロボットプロセスイノベーションを現実のものとするときに,踏まえておかなければならないデザインや安全(リスク)について論述している。

 本書が,革新的ロボットの実現,ロボットプロセスイノベーションの実現を介して,ロボット革命を現実のものとすることに役立つことを祈念してやまない。
 
人と協働するロボット革命最前線
〜基盤技術から用途、デザイン、利用者心理、ISO13482、安全対策まで〜
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