はじめに

1980 年代の高度成長期に日本で開発ブームになった食品用機能性包装と包材には、「日本発の新技術」が数多く見られた。その代表的なものが「脱酸素剤の利用」であったが、この日本発の包装技術が「アクティブパッケージ」という名でアメリカにおいて認知され、世界に紹介され、欧米などで多くの基礎的・応用的な研究がなされ、更に新しい技術として発展してきた。これらの成果は、国際学会で報告され、書物も刊行され、製品になり、技術的に大きく進化した。それらの中から「インテリジェント・パッケージ」、「スマート・ パッケージ」という新しい概念も生まれ、新しい機能性包装技術が生まれている。
 一部の機能性包材は古くからあったが、「機能性」という言葉が包装に使われるようになり、包装資材の高付加価値化に当たって「包装の機能」が改めて問い直されるようになっている。それらの成果は、「人に優しい」ユニバーサルデザインでは、日本人のきめ細かさの真価が発揮され、「環境に優しい」という視点では、包装廃棄物のリサイクルの面から新しい切り口の機能性が求められるようになっている。
 今日、世界的に食料資源が逼迫しつつある背景から、先進国では「食品ロスの削減」のための「食品のロングライフ化」に進みつつあり、途上国にあっては「収穫後ロスの削減」のための「食品の高付加価値化」が叫ばれるようになり、「包装の機能」と「機能性の包材」が見直されてきている。
 長く続いた円高基調から円安へと変わり、今後しばらくは円安基調が続くものと予想されており、このような中にあっては、日本の高品質な農産物・食品は海外に輸出しやすくなり、高い品質をアジアの過酷な環境でより長く保持することが求められるようになった。また、安いだけで輸入されていた途上国の農産物・食品を一層ブラシュアップして高品質なものにしていくことが求められるようになる。その時こそ、日本の優れた包装技術・包装資材の出番である。
 本書は、それぞれの分野の専門家の方々に包装を巡る最新の世界的な動向と、それに対応した機能性包装の新展開についてご執筆いただいた。本書が皆様のお役に立ち、日本の包装技術と包装資材の更なる発展と国際的な場における活躍の一助になれば望外の幸せである。
一般社団法人日本食品包装協会
理事長 石谷孝佑
 
食品用機能性包装の新展開
〜食品ロスの削減、商品安全認証、機能性包装等の国際的な動向を踏まえて〜
Advanced Japanese Active Food Packaging and Global Development
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