食品包装業界は、5年以上も前から「ある転機」に向けて、様々な問題及びその解決のための取り組みが行われてきた。
 一つは「商品の賞味期限の延長のための技術的な問題」への取り組みであり、一つは「日本の夏の亜熱帯化による食品劣化から内容物を守るための包材開発の問題」であり、更には「輸入フードパッケージ材料の見極め」である。
 しかし、これらの問題が活発に議論され始めたときに、あの大震災が襲い、東日本を始めとして日本中の経済活動が強制的にリセットされた。震災後、コンビニエンスストアから食品が姿を消し、各店舗に欠品が相次いだ。それを解消しようと、食品メーカーばかりか各包材メーカーも尽力したが、東北から関東エリアの工場では「自動倉庫」が被災し、迅速な供給のための頭脳を失うなど、半年は混乱が続いた。
 ただ、震災後の変化として良いこともあった。それは「主婦層、独身女性社会人がコンビニエンスストアのヘビーユーザーになった」ことである。そのため、コンビニを始めとした各流通系企業は、強化を続けていた自社のPB 商品を価格だけではなく「使い勝手や品質、美味しさ」などを改めて見直す作業に入った。
 例えばイオン・グループでは、代表的PBである「トップバリュー」の見直し、てこ入れを行うとし、また西友では親会社のウォルマートから与えられたPBでの展開だけでは良しとせず、独自に「お客様のお墨付き」ブランドで攻勢をかけ、驚異的な伸び率を達成している。
 先に上げた商品の賞味期限の延長問題では、即席袋めんの外袋にアルミ蒸着フィルムを使用することで、賞味期間が5か月から6か月に延長し、またアルミ蒸着フィルムの美観性も相まって売り上げを伸ばした。それに意を強くして、即席めんの業界では「業界の1/3ルール」も改正してもらうという意気込みが出てきている。
 また、夏場の食品劣化の保護に関しては「季節限定バリアーフィルム化」需要が活発化している。梅雨から秋口までの高温多湿期において、通常は非バリアー包装で流通している食品を、季節限定でバリアー構成にしてしまうもの。特に米菓包装で積極的に採用されており、今後は他の食品にも横展開することが見込まれている。
 輸入包材、特に輸入フィルムの見極めについては食品メーカーの目が肥えてきており、良いものと悪いものの見分け方が問題なく出来るようになっている。アルミ蒸着フィルムなどは、輸入品のフィルム価格が非常に安価になっており、国内の食品メーカーはスペックに問題がなければ使用したい。しかし、まだまだ密着性不足など超えるべきハードルが高く、現状ではあまりバリアー性を問われない冷凍食品などに向けられている
。  このように食品包装を取り巻く環境は5〜6年前から大きく変わり始め、東日本大震災がそれに加速度を与える結果になった。本レポートが、現在の食品包装業界を見る上で必携の書となることを確信し、ご購読をお勧めする。
2015年7月
シーエムシー・リサーチ
 
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