発刊にあたって

 民生分野におけるマルチメディア市場の着実な浮上と,生活の原点から問い直される情報通信基盤および各種インフラストラクチャーエレクトロニクス産業をめぐる急激な環境変化は,必然的にLSI・電子部品のビジネス戟略の転換を迫り,デバイスの開発コンセプトに劇的変化をもーたらしています。デバイスにおける端的な表れは,言うまでもなく「微細イヒ」から多様な「機能メモリ」の追求であり,これまでのDRAM=人の頭脳の実現から「感性増幅装置」へのコンセプトの転換です。
 21世紀を目前にした既成のパラダイムの崩壊と新たな創造の時代を迎え,マルチメディア社会を実現する戟略デバイスとして,「強誘電体薄膜メモリ」が急速に台頭しつつあります。
 本書は,まず強誘電体薄膜メモリが既存デバイスに与えるインパクトと,その置き換えの可能性を明らかにし,同時に米国有力企業の今後の戦略を詳細に解説します。
 さらに本書の特徴として,これまで発表されることが少なかった強誘電体薄膜メモリのプロセスインテグレーション技術をはじめ,プロセス技術・メモリセル技術・回路技術および最新の材料技術を豊富なデータとともに詳述します。また,最後に,今後期待される強誘電体薄膜メモリの広範なアプリケーションの可能性とデバイス展開(超低消費電力デバイス,超高密度・超高速デバイス,超低コストデバイスほか)に言及します。
 本書は,わが国半導体産業の新たな飛躍の貴重なトリガーとなることをめざし,この分野の指導的研究者,技術開発部門責任者の方々が総力を結集して,執筆・編集にあたっています。ここに深く謝意を表するとともに,本書が広くご活用されることを期待する次第です。
1995年6月  編集委員会
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