次世代半導体用の難加工結晶材料のための超精密加工技術
 〜SiC、GaN、AlN、Ga2O3、ダイヤモンド〜
= 刊行にあたって =
 シリコン半導体が現代のハイテク技術の数々を担っていることは、本書の読者の多くが知るところであろう。近年では、ここにSiC、GaNといった新たな結晶材料群が加わることで、これまでよりも一層の高機能化、高効率化したデバイスの出現が期待されている。これらの材料はその結晶成長の難しさから長らく大型結晶が得られずにいたが、長年の地道な研究開発により、実用レベルのサイズと品質が達成されつつある。新素材による新デバイスの実用化が一気に現実味を帯び始めている。

 一方、これらの材料を用いるために必要な各種の精密基板加工技術は、未だに決定打を欠いている。新材料はいずれも高硬度脆性材料であるとともに、高い熱的・化学的安定性を備えている。加工が著しく難しく、難加工材料にカテゴライズされている。シリコン加工技術をベースとした従来加工の延長線で議論していては、来るべき新デバイスの本格的実用化に対して加工技術がボトルネックとなりかねない。加工開発を一気に加速していく必要がある。

 本書はこのような現状を鑑みて、次世代半導体用の難加工結晶材料に対する超精密加工技術に特化した専門書籍として編集を行った。精密加工に関わる専門書籍は多数存在する中、当該分野の第一線で活躍されている研究者・技術者の多くの方々にご協力をいただくことで、これらの結晶材料基板加工に特化した特色ある専門書籍として完成した。

全8章に及ぶ本書の構成は以下のとおりである。

 まず第1章において、脚光を浴びる各種の結晶材料、デバイス技術の状況を議論する。目前に迫る新デバイス開発の最前線を理解し、デバイス実現に向けた加工技術開発の重要性や意義を改めて認識いただきたい。第2章においては、各種の新結晶材に対する基板加工技術の実状を整理した。極めてホットな領域であると同時に、製造上の企業秘密やノウハウを含むセンシティブな状況もある。最新結晶材料に対する基板製造加工に実際に携わる専門家に執筆を依頼しており、必ずしも全ての情報が開示されていない点はご容赦いただきたい。第3章および第4章では、基板製造に関わる加工装置および加工副資材を取り上げた。加工装置や加工副資材の基礎を解説しつつ、次世代材料への応用発展を見据えたポイントを幅広く紹介した。第5章では、基板加工技術をいったん離れ、デバイスプロセスで必要となる各種の精密加工技術を議論した。新デバイスが本格的な普及期に入れば、いずれ必ずデバイスプロセスでの加工技術にも革新が求められることとなる。現状技術を総括的に把握しつつ、将来課題に対する議論の出発点としていただきたい。第6章は、基板加工に関わる各種の評価計測技術を総合的に取り上げた。基板品質保証として重要な表面品質ならびに形状品質の計測技術を取り上げるとともに、加工変質層評価技術に重点を置き、次世代結晶材料のための様々な変質層評価手法を紹介した。変質層評価技術は、次世代結晶素材のための加工技術開発促進のための重要な武器である。第7章は、次世代加工技術開発の基礎となる加工メカニズム解明に向けた取り組みにフォーカスした。すなわち、加工現象の「見える化」のための最新計測評価技術の数々を取り上げた。「見える化」によって加工メカニズムが明らかとなれば、次世代材料用の加工装置、加工副資材開発のための大きなヒントを得ることになろう。最後に第8章では、次世代の高効率・高品位加工技術の数々を取り上げた。新しくユニークな発想のもとで生まれた最新の加工技術が実用化されて基板加工工程に組み込まれていくことを願うとともに、新たな加工技術創出のためのヒントとなることを期待したい。

 
次世代半導体用の難加工結晶材料のための超精密加工技術 
〜SiC、GaN、AlN、Ga2O3、ダイヤモンド〜
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