推薦の言葉

 近年の私たちの食生活は豊かになりました。一方で,大量生産・大量消費の時代から質が問われる時代に転化しつつあります。われわれ「食」に従事するものとして,消費者の厳しい要求と満足を満たすため,消費者のニーズを的確に捉えながら品質の向上に励まなくてはなりません。
 このたび,このような時代の要求に応えるべく『水産食品HACCPの基礎と実際』が発刊されました。水産関係者のためのわかりやすく実用的なHACCPに関する手引書であります。
 本書は,HACCP手法の概要や水産食品に由来する危害,食品衛生法,一般的衛生管理事項などをわかりやすく解説した基礎編と,さらにねり製品,缶詰,佃煮,ひもの,節類,塩蔵品などの具体的加工品に対して,品目特性や危害分析,重要管理点,コントロール技術といったHACCP導入の要点を記した実際編より構成されております。良質の商品開発を目指し,またさらなる品質の向上に励むわれわれ水産関係者にとって時機を得た参考書となるでしょう。
 つきましては関係各位におかれましても本書が有効に活用され役立てられますよう要望し,広くご推薦申し上げる次第であります。
2000年9月  社団法人大日本水産会会長 佐野 宏哉
発刊にあたって

 いま食品業界では世界的にHACCP(危害分析重要管理点方式)という新しい衛生管理システムの導入への気運が高まっている。この背景には新興・再興の病原菌による大規模食中毒の世界的な蔓延がある。
 わが国でも、HACCPの考え方は1995年に改正された食品衛生法の中で、総合衛生管理製造過程の承認制度として取り入れられ、水産関連の食品では一部の容器包装詰加圧加熱殺菌食品と魚肉練り製品が対象製品と定められている。この制度はわが国では任意のものであり、導入は各企業の自主性にゆだねられている。
 一方、欧米先進国では近年健康志向から魚介類消費が増大してきたため、その危害に対する警戒が強い。米国、EUなどのHACCPでは水産物が真っ先にその規制の対象となり、HACCPの導入が義務化されていることから、わが国からの輸出水産物も同等の規制を受けることになった。
 このような情勢のもと、多様な水産食品のHACCPについて、その基礎となる各種危害について分かりやすく解説し、また実際の導入に必要な知識をまとめ、15,000の企業体が存在するといわれる水産業界の便に供することは大いに意義あることと考え、ここに本書を刊行することとした。
 執筆にあたっては、最新の基礎的な知見をできるだけ分かりやすく、また実際面で役立つようできるだけ具体的に記述していただくようお願いした。その趣旨をご理解いただき、ご執筆くださった執筆者各位に厚くお礼を申し上げたい。製品ごとに記述したスタイルの不一致の点はある。これはHACCPが上述のように状況ごとに多面的な対応を求められる性質からすれば、現状としてこのような編集方針を取ったこともやむをえないこととしてご理解いただきたい。
 本書が水産関連企業の管理者や現場の技術者、また食品・衛生関係の大学や短期大学、専門学校の学生、さらにはこの方面に関心を持たれる多くの方々に広く利用され、少しでもご参考になることを願っている。
 なお、本書の企画立案については、(社)大日本水産会、齋藤寿典氏に各段のご高配をいただいた。また出版にあたっては、潟Gヌ・ティ−・エスの林恵子氏に多大なご援助をいただいた。これらの方々に深謝申し上げる次第である。
2000年9月  有馬 和幸
高鳥 直樹
藤井 建夫
『水産食品HACCPの基礎と実際』 エヌ・ティー・エスより刊行

 水産食品のHACCPの基礎となる各種危害や実際のHACCP導入に必要な知識などについて分かりやすくまとめた『水産食品HACCPの基礎と実際』が(株)エヌ・ティー・エス(東京都文京区湯島2‐16‐16)より刊行された。編集委員は有馬和幸((有)有馬食品技術研代表取締役)、高鳥直樹((社)大日本水産会品質管理部調査役)、藤井建夫(東京水産大学食品生産学科教授)の3氏。

【主な内容と執筆者】(敬称略)
 第1編「基礎編」▽第1章「HACCPとは何か」藤井建夫(東京水産大学)▽第2章「PL法期限表示、ISO9000シリーズ―HACCPとの関連」有馬和幸(距L馬食品技術研)▽第3章「食品としての水産物」國崎直道(女子栄養大学)▽第4章「水産食品の生物学的・化学的・物理的危害とその制御」藤井建夫(東京水産大学)、高鳥直樹((社)大日本水産会)▽第5章「水産食品をめぐる食品衛生法」伊藤蓮太郎((財) 東京顕微鏡院)▽第6章「一般的衛生管理事項」有馬和幸((有)有馬食品技術研)
 第2編「実際編」▽第1章「すり身・ねり製品」柴眞(柴研究所)▽第2章「缶詰・びん詰・レトルトパウチ食品」若澤満((財) 食品環境検査協会)▽第3章「煮魚・焼魚」豊田恭平(豊田技術士事務所)▽第4章「佃煮」大橋藤五郎(カネハツ食品(株))、島野清(全国調理食品工業協同組合)▽第5章「かつお節・削り節」石川志郎((株)マルハチ)▽第6章「煮干し品、塩千晶」平塚聖一(静岡県水産試験場)▽第7章「鮮魚介類」高鳥直樹((社)大日本水産会)▽第8章「フライ製品・冷凍食品」原裕次郎・中間俊彦(宝幸水産(株))▽第9章「魚卵製品(イクラ、塩カズノコ)」武士甲一(北海道立衛生研究所)▽第10章「酢漬け・シメサバ」阿部久夫・川口英雄・中島泉((社)青森県薬剤師会衛生検査センター)▽第11章「イカ加工品」富田勉((株)なとり)▽第12章「塩蔵品、塩辛」信濃春雄(道立工業技術センター)▽第13章「海苔」大房剛(山本海苔研究所)
 定価17,000円(税別)、B5版、本文548頁。申し込み・問い合わせは(株)エヌ・ティー・エス(TELO3−3814−3511、FAXO3−3811−5900)まで。
(月刊HACCP 2001年1月掲載)
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