刊行にあたって より抜粋

 次世代に向けた保健・医療・福祉の問題が活発に論議され、その政策にはこれまでになく大きな変化が求められています。
 少年時代の教育での立て直しの一つとして、家庭や学校での食事やマナーを中心とした教育「食育」、働く人々の生活習慣病の予防のための家庭での栄養教育の必要性がとりあげられています。すなわち、各ライフステージにおける食事、運動、休養などの日常の正しい生活習慣が、「心も体も」健全な生活を保つように近づくのです。このために、政府は乳幼児から高齢者まで、あるいは傷病人等、各ライフステージの健康問題にこれまで以上に、取り組むことが重要です。
 このような社会状況の将来の変化、栄養・健康に関する新しい知見、新しい医療技術の開発、栄養政策の変化に伴い、わが国の栄養・食生活問題も広範かつ複雑多様化し、これまでの栄養や食品との関わりでは解決できない問題が多くなりました。これらに関連して、疾病の構造も欠乏症から過剰症や生活習慣病の総合的見地からの解決が必要となっています。また日本の食料は自給率40%以上と非常に低く、外国からの食料の輸入量の増加に伴い食生活が豊かになっている現在では、栄養学の立場から予防や治療を目的とした栄養管理、栄養指導が重要となっています。しかも栄養学関連の新事実の発見、医療の知識や技術の急速な進歩は栄養学の面でも高度・専門化が求められるようになりました。管理栄養士も栄養士も、他の医療スタッフと同様に、管理栄養士・栄養士の各職場での存在の意味を把握し、これまで以上に重大な役割と責務をもつことになります。
 このような栄養・健康・保健・福祉の面での現状と将来を踏まえて、1996年以降、21世紀における「栄養・食生活」「国民栄養調査の再構築」などについて検討がなされてきました。そして、1998年には新しい時代が求める管理栄養士像の形成に向けた「21世紀の管理栄養士等あり方検討会」において、栄養士の業務のありかた、養成のあり方、国家試験のあり方の検討が行われました。この検討会の結果を踏まえて、2000年(平成12年)4月の新しい栄養士法の改正において、登録資格から免許資格とされた管理栄養士は、主として傷病者の栄養指導を行う専門家であると位置づけられました。この趣旨にしたがって、教育カリキュラムと国家試験ガイドラインの改正へとつながったのです。
 栄養士法改正の趣旨を踏まえ、平成12年10月から「管理栄養士・栄養士養成施設カリキュラム等に関する検討会」が厚労省において開催されました。この検討会の方針は高度な専門的知識および技術のもった資質の高い管理栄養士養成の具体的内容について検討されました。栄養士法および教育カリキュラム改正を受け、厚労省は2002年(平成14年)1月から「管理栄養士国家試験出題基準(ガイドライン)改定検討会」において管理栄養士国家試験出題基準(ガイドライン)が発表されました。ここにおいては、管理栄養士には、社会の変化、国民の要請を的確に対応し、国民の健康やQOLの向上のために指導する専門家職種として求められています。
本書の項目は、新しい管理栄養士のカリキュラムに沿って選びました。今、現場で活躍されている管理栄養士さんをはじめとして、この分野に関係する人たちに、さらに関心をもつ一般読者に健康・栄養についての最新の話題や情報を提供できれば幸いに思います。。
2005年9月 編集委員長 中村丁次
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